「坂に入ると、すぐに脚が重くなって止まりたくなる」「自分は坂に向いていないのかもしれない」。
上り坂が苦しい理由は、脚力の差だけではありません。
ギアが重すぎることと、上り始めの数分で頑張りすぎることの2つは、体力に関係なく、次の坂から変えられる部分です。
どちらも、トレーニングの理論に入らなくても、数字と手順で見直せます。
いちばん軽いギアを、数字で知っておく
軽さは、前と後ろの歯数の比で決まる
ペダルを1回転させたときに後輪が何回まわるかは、前のギアの歯数÷後ろのギアの歯数で決まります。

この数字が小さいほど軽いギアです。
たとえば前34T(T=歯数)×後ろ34Tなら34÷34で1.00、ペダル1回転で後輪がちょうど1回転します。
前50T×後ろ11Tなら50÷11で約4.55になり、同じ1回転で後輪が4回転半ほどまわる重いギアです。
坂で使うのは、前の小さいギアと、後ろのいちばん大きいギアの組み合わせです。
同じ車体でも、組み合わせる部品で軽さが違う
ブリヂストンのアンカーRE6は、同じフレームに3種類の部品の組み合わせを用意しています。
仕様表から、いちばん軽いギアを計算すると次のようになります。
| モデル | 前のギア | 後ろのギア | いちばん軽い組み合わせ | 比(前÷後ろ) |
|---|---|---|---|---|
| CLARIS MODEL | 50-34T | 11-32T | 34T×32T | 約1.06 |
| 105 MODEL | 50-34T | 11-34T | 34T×34T | 1.00 |
| CUES 9s MODEL | 50-34T | 11-36T | 34T×36T | 約0.94 |
前のギアは3台とも同じなのに、後ろのいちばん大きい歯車が32Tか36Tかで、いちばん軽いギアの比に約1割の差があります。
自分の車体の数字は、メーカーのページの仕様表にある「クランク」と「カセットスプロケット」の欄で確かめられます。
もっと軽いギアにしたくて後ろのスプロケットを大きくする場合、リアディレイラーが対応する大きさを超えると、変速できなくなったり、部品が壊れたりするおそれがあります。
チェーンの長さが合わなくなることもあるので、部品の交換はショップで相談してください。
上り方の基本
坂に入る前に、ギアを軽くしておく
坂の途中で脚に力が入っている最中に変速すると、チェーンがうまくかからず、ガチャンと音がすることがあります。
坂のふもとで1〜2段軽くしてから入ると、変速の失敗と、脚の使いすぎを同時に避けやすくなります。
勾配がきつくなる場所が見えたら、その手前で、ペダルを踏む力を一瞬ゆるめて変速します。
座って回すのを基本に、立ちこぎは短く使う
上り坂では、サドルに座ったまま軽いギアを回すのが基本です。
サドルから腰を上げる立ちこぎ(ダンシング)は、勾配が急になった区間や、座りっぱなしで同じ筋肉が疲れてきたときに、短い時間だけ使う方法があります。
上半身は力を抜き、目線は少し先へ
上り坂では、ハンドルを強く引きつけたくなりますが、肩や腕に力が入ると呼吸が浅くなりがちです。
ハンドルの上側(フラットな部分)を握ると体を起こしやすくなる一方、ブレーキに手が届きにくくなるので、車の多い道ではブラケットを握ります。
握る場所の使い分けは「ロードバイクの乗り方の基本、姿勢・変速・ケイデンスとお尻や手の痛み」でも整理しています。
前かがみが深くて上りで体を起こしにくい場合は、車体のサイズやハンドルの位置が合っていないこともあり、その見直し方は「ロードバイクのサイズの選び方、身長別の目安と試乗・フィッティングで見る点」で扱っています。
ペース配分の組み立て方
ペースは、上る前に強さの順番を決めておくと崩れにくくなります。
次の順で組み立てます。
最初の数分は、隣の人と短い会話ができるくらいの息づかいを目安にします。
ここで頑張ると、後半に脚と息の両方が苦しくなります。
息が乱れて言葉が続かなくなったら、ギアを1段軽くするか、ペダルを回す速さを少し落とします。
カーブの先が急になっているなど、きつくなる場所が見えたら、早めに軽くします。
頂上の近くは先が見えにくく、法律でも徐行すべき場所とされています。
最後に力を出し切るより、前と後ろを確かめる余裕を残して上り切ります。
坂の途中で止まって休むのも選択肢です。
止まるときは、後ろから来る車や自転車を確かめて、路肩の安全な場所に寄ります。
走り出すときは軽いギアに入れ、踏み出す側のペダルを少し高い位置に戻してから踏み込みます。
初めて上る坂の選び方
距離と標高差から、勾配の見当をつける
坂の勾配(%)は、標高差÷距離×100で計算できます(標高差と距離は、どちらもmにそろえます)。

| 坂の例 | 標高差 | 距離 | 平均勾配 |
|---|---|---|---|
| ゆるやかな坂 | 100m | 2km | 5% |
| やや急な坂 | 240m | 3km | 8% |
| 長い坂 | 300m | 6km | 5% |
同じ5%でも、同じ速さで上るなら、2kmと6kmでは上っている時間が3倍になります。
平均勾配は坂全体をならした数字なので、途中にもっと急な区間があることがあります。
地図アプリやルートを作るサービスで、坂の距離と標高差を調べてから出かけます。
初めてなら、距離が短く、平均勾配の小さい坂から始め、同じ坂に何度か通うと、自分のペースの変化が分かりやすくなります。
持ち物と、出かける前の確認
上りは汗をかき、頂上では体が冷えやすくなります。
- 水と、補給食
- 下りで羽織る薄手の上着(ウィンドブレーカーなど)
- 前後のライト(トンネルや、帰りが遅くなったとき)
- パンク修理の道具と携帯ポンプ
- ブレーキの効きとシューやパッドの残りを、出発前に確かめた
携帯品の組み合わせは「ロードバイクの携帯品チェックリスト、サドルバッグと携帯工具の中身」、ブレーキの点検は「ロードバイクのブレーキ調整とシュー・ワイヤー交換、自分でやる範囲と店に任せる範囲」にまとめています。
頂上と下りで気をつけること
頂上付近と急な下りは、徐行すべき場所
道路交通法第42条は、車両(自転車も含む)が徐行しなければならない場所として、「道路のまがりかど附近、上り坂の頂上附近又は勾配の急な下り坂を通行するとき」を挙げています。
徐行は、すぐに止まれる速さで進むことです(同法第2条)。
上り切ってすぐに加速するのではなく、頂上付近と急な下りでは、すぐに止まれる速さまで落とします。
休憩は、見通しのよい、道の端の安全な場所で取ります。
下る前に、体が冷えない準備をする
上りでかいた汗は、下りの風で一気に冷えます。

下り始める前に上着を羽織り、手袋を着けてから走り出します。
走りながら片手で上着を着たり、補給したりせず、止まってから済ませます。
ブレーキは早めに、引きずり続けない
ブレーキは、前後を同時に、カーブの手前で減速を済ませておくのが基本です。
長い下りでは、ブレーキをずっと握ったままにしない使い方も欠かせません。
Canyonのサポート記事は、カーボンリムのリムブレーキについて、急な下りでブレーキをかけ続けるとリムが過熱し、カーボンの繊維を傷めるおそれがあるとして、かけ続けないよう案内しています。
ディスクブレーキでも、シマノの取扱説明書は、ブレーキを使うとキャリパーとローターが高温になるため、走行中や降りた直後に触れないよう注意しています。
- カーブの途中で強くブレーキを握る
- 前のブレーキだけを強く握る
- 下りながら片手で上着を着る、補給する
- 下ったばかりのローターやリムに手で触れる
雨の日やぬれた路面では、晴れた日と同じ感覚では止まれないことがあるので、いつもより早めに減速を始めます。
長い下りで、ブレーキの手応えがいつもと違うと感じたら、安全な場所に止まり、そのまま無理に下り続けないでください。
坂に出る前に覚えておきたい4つ
次の4つを押さえておけば、初めての坂でも組み立てを考えながら上れます。
- 自分の車体のいちばん軽いギアの比(前÷後ろ)を知っておく
- 坂のふもとでギアを軽くし、上り始めは「まだ楽」な強さで入る
- 平均勾配は「標高差÷距離×100」で見当をつけ、短くゆるやかな坂から始める
- 頂上付近と急な下りは徐行し、ブレーキは前後で早めに、引きずり続けない
参考にした資料
- ブリヂストンサイクル公式サイト「ANCHOR RE6」の仕様(クランク・カセットスプロケットの歯数)
- 道路交通法 第2条・第42条(e-Gov法令検索)
- Canyon サポート記事「Using rim brakes with carbon rims」(カーボンリムの過熱)、シマノ 取扱説明書(ディスクブレーキのキャリパー・ローターの発熱)




